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オペラ夏の祭典2019-20 Japan-Tokyo-World

『ニュルンベルクのマイスタージンガー』演出家からのメッセージ

2020年1月26日から、共同制作先のザクセン州立歌劇場(ドレスデン)での上演が始まりました。
ここで、本作の演出について、演出を手掛けるイェンス=ダニエル・ヘルツォークからのメッセージを公開いたします!
(東京文化会館広報誌『音脈』Vol.76より)

 

演出:イェンンス=ダニエル・ヘルツォーク

 

 『ニュルンベルクのマイスタージンガー』に取りかかるにあたり、私たちはとても早い段階で、劇場という世界を舞台とすることに決めました。
 このオペラには、政治的な登場人物がいません。ニュルンベルクには市長がいないようで、町の支配者も、警察官も司祭もいません。そしてこの世界の全ての登場人物は芸術と関わっています。またもうひとつ言えるのは、ツンフト(ドイツ手工業者のギルド組織)、職人の世界が、ワーグナーにとって非常に重要な役目を果たしている、ということです。劇場にはまだ、昔ながらの靴職人や仕立屋、帽子職人、技術者が存在しています。ですから、劇場を舞台とすることは自然に決まったのです。

 

 信じられないかもしれませんが、本作はワーグナーによる喜劇です。誰も死なない。これはワーグナーの場合、かなり稀なことです。喜劇というものが活発さやテンポ、簡潔さを必要とするのであれば、それを無視することはできない。そう考えた私たちは、多くの場面転換を可能にする上演方法を模索しました。演劇的な効果も使っています。

 

 またこのオペラで決定的に重要だったのは、ハンス・ザックスの芸術家としてのバイオグラフィーです。ですからそういう意味では、この作品は私のとても個人的な物語でもあります。偉大な芸術家が年齢を重ねて劇場の幹部になり、多くの社会的利害を調整しなくてはならなくなる。そして作品全体を通して、彼は自分の後継者を育てようとします。自分の遺産や、自分が芸術の中で信じているものを継いでくれる人物。劇場と芸術が常に陥る危険性、硬直状態に陥ることから救い出してくれる人物です。

 

 彼がこれに成功するのか、遺産をなくさずに済むのか、それとも、若い世代が独自の道を探すのか…。私はここではその疑問にお答えしません。皆さんは公演でそれをご覧になってください。ただ私たちは、とても特別な筋道を考えついた。そうお伝えしておきましょう。

 

以上3枚:2019年4月ザルツブルク・イースター音楽祭公演より

 

 

果たしてどのような筋道なのか・・・結末は、ぜひ公演会場でお確かめください!

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